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本稿では、申采浩の小説を対象に、進化論的な認識に基づく民族英雄の形象化過程の変貌について考察する。植民地化される前、申采浩は、進化論的な認識に基づいて歴史を執筆した。この過程で、他の種族を征服した勝者としての民族の地位は、民族英雄によって具体化された。しかし、勝者の記憶を通して現在を克服しようとした申采浩の民族英雄の企ては、植民地化という現実によって次第に亀裂を呈した。崔都統伝で形象化された民族英雄が勝者ではなく敗者であるということは、植民地化された現実の反映であると同時に、敗者としての現実を認めさせる進化論的な認識そのものに対する懐疑につながっている。進化論的な世界認識に対する申采浩の疑問は、亡命後に書いた複数の作品で本格化している。民族英雄的な面貌を持ちながらも民を弾圧する弓裔に対する批判は、申采浩の進化論的な世界認識に基づく民族英雄の企てが変化したことを示している。特に、男性の英雄ではなく女性の英雄の形象化と民族内部の不平等な構成員である民衆に対する視点は、申采浩の民族英雄の企てが、もはや進化論的な競争に基づく民族主義によって形象化されたものではないということを示している。以上の議論は、進化論的な認識で画一化されている1920年代以前の申采浩に対する思惟の多様化に貢献するものと考えられる。
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